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1月29日説教

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聖 書 フィリピの信徒への手紙3章12~16節
説 教 「キリストに捕らえられて」

 「わたしは、既にそれを得たというわけではなく、既に完全な者となっているわけでもありません。何とかして捕らえようと努めているのです。自分がキリスト・イエスに捕らえられているからです。」(12節)

 パウロは既に老境に及んでいながらも、若者以上に若者らしい意欲的な生きる姿を見せています。信仰は命盛んな世界ですから、常に若々しいものであって当然でしょう。そういう意欲的生き方の現れは、例えばパウロはそれを格闘する競技に譬えます。「だから、わたしとしては、やみくもに走ったりしないし、空を打つような拳闘もしません。むしろ、自分の体を打ちたたいて服従させます。それは、他の人々に宣教しておきながら、自分の方が失格者になってしまわないためです。」(コリントの信徒への手紙一、9章26、27節)。或いは戦いのイメージで語ります。「わたしたちの戦いは、血肉を相手にするものではなく、支配と権威、暗闇の世界の支配者、天にいる悪の諸霊を相手にするものなのです。だから、邪悪な日によく抵抗し、すべてを成し遂げて、しっかりと立つことができるように、神の武具を身に着けなさい。」(エフェソの信徒への手紙6章12、13節)。そういう積極的な姿勢で「目標を目指してひたすら走る」のです。律法的な自分を義とする功績追求から解き放たれた福音が、彼を自由にするからです。律法によって義とされることを求める生き方は、そうは行きません。常に束縛と裁きで足止めされるのです。復活の主との出会いが彼の命に解放と希望を与え、自らもキリストの復活に与る為に、キリストと共に苦しみ、耐え忍んで走ることを喜ぶ者とした、ということが出来ます。

 キリストに捕らえらている、という事実を知ることが、自分の不完全さや弱さや欠点すらに正直になります。「どこに行けば/あなたの霊から離れることができよう。どこに逃れれば、御顔を避けることができよう。天に登ろうとも、あなたはそこにいまし/陰府に身を横たえようとも/見よ、あなたはそこにいます。曙の翼を駆って海のかなたに行き着こうともあなたはそこにもいまし/御手をもってわたしを導き/右の御手をもってわたしをとらえてくださる。」(詩編139篇7~10節)。キリストに捕らえられている、それが真に自分の方は既に捕らえているわけでなく、その手懸かりしか掴んではいないことを、平らかに認めることが出来る根拠となるのです。このように自分がすっかり捕らえられた、と自らを受け止める時には、それによって自分の小ささや貧しさを骨身に浸みて分かりますから、「既に得た」とも「既に完全な者となっている」とも思わないという謙遜が心を覆います。他方においては、完全なキリストに愛され赦され受け容れられるていることから、安定した命の基盤を得ることになる、という訳です。

 「後ろのものを忘れ」とは、過去に引きずられない、ということを意味します。功績功徳に依り頼まず、罪責の記憶から赦され解放されることです。その上で過去の全てが「前のものに全身を向け」る意欲に変えられます。ある人は自転車が静止していれば倒れてしまうが、倒れるエネルギーを前進する力に転換することによって、倒れずに立つことが出来る、というメカニズムで説明していました。従ってそれは過去に無頓着になる事ではありません。「後ろのもの」は既に手の内になく、「前のもの」は未だ始まっていません。「行く先を知らずに出発」したアブラハムの歩み出しが、今パウロの意欲と勇気に溢れた生き方に、見事に再現している様を確認したいと思います。「信仰によって、アブラハムは、自分が財産として受け継ぐことになる土地に出て行くように召し出されると、これに服従し、行き先も知らずに出発したのです。」(ヘブライ人への手紙11章8節)。「主はアブラムに言われた。『あなたは生まれ故郷/父の家を離れて/わたしが示す地に行きなさい。‥‥アブラムは、主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。」(創世記12章1、4節)。それが「既に完全な者となっているわけでない」と言ったパウロが、「わたしたちの中で完全な者は、だれでもこのように考えるべきです」と勧める、一見矛盾する言葉を解く鍵です。アブラハムもパウロも自らの弱さや罪という不完全の中で、神の赦しと慈しみに委ね切る「完全」に生きたのです。

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