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3月19日説教

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聖 書 サムエル記上 8章4~9節
説 教 「王を求める民」

 「イスラエルの長老は全員集まり、ラマのサムエルのもとに来て、彼に申し入れた。『あなたは既に年を取られ、息子たちはあなたの道を歩んでいません。今こそ、ほかのすべての国々のように、我々のために裁きを行う王を立ててください。』」(4、5節)

 サムエルの老いが進み、若者らも期待出来ない状況に、イスラエルは王政を布くことをサムエルに求める様になりました。士師たちの指導された時代から兆(きざ)し初めていた願いが、ここで表面化したと言えます。「イスラエルの人はギデオンに言った。『ミディアン人の手から我々を救ってくれたのはあなたですから、あなたはもとより、御子息、そのまた御子息が、我々を治めてください。』ギデオンは彼らに答えた。『わたしはあなたたちを治めない。息子もあなたたちを治めない。主があなたたちを治められる。』」(士師記8章22、23節)。私たちは見えない神に依り頼むために常に祈り、絶えず答を待ち望んで忍耐する、という信仰姿勢を日頃から持ち続ける訳です。しかし、とかくそういう信仰を生き生きと保つ努力を、怠りがちな性格からして、見える指導者に治められる、ということの手早さを、求め易いのです。それは、出エジプトの民が荒れ野で、モーセを待ちきれずに、金の子牛を造ったことを初め、約束の地に定着後も常に土着の偶像に、心を寄せる誘惑に負けがちであった傾向と共通しています。

 しかも、この要求には「ほかの全ての国々のように」、という理由が挙げられています。それは先ず唯一の神の選びから目を離すことを意味します。地上の全部族の中からわたしが選んだのは、お前たちだけだ。‥‥」(アモス書3章2節)。その選びに基づいて、神は民を「宝の民」と呼んで下さいます。「今、もしわたしの声に聞き従い、わたしの契約を守るならば、あなたたちはすべての民の間にあって、わたしの宝となる。世界はすべてわたしのものである。」(出エジプト記19章5節)。そしてさらに特別に「主の愛」が注がれる民という自覚を与えようとなさいます。「あなたは、あなたの神、主の聖なる民である。あなたの神、主は地の面にいるすべての民の中からあなたを選び、御自分の宝の民とされた。主が心引かれてあなたたちを選ばれたのは、あなたたちが他のどの民よりも数が多かったからではない。あなたたちは他のどの民よりも貧弱であった。ただ、あなたに対する主の愛のゆえに、あなたたちの先祖に誓われた誓いを守られたゆえに、主は力ある御手をもってあなたたちを導き出し、エジプトの王、ファラオが支配する奴隷の家から救い出されたのである。」(申命記7章6~8節)、こういう特異な歴史的経験にも関わらず、「ほかの全ての国々のように‥‥王を立てて下さい」と言って、彼らも又折角の独自の性格(アイデンティティー)を振り捨てて、「フツウの国」に成り下がることを求めたのです。正にそれは主イエスが言われたように、「味を失った塩」(マタイによる福音書5章13節)となること以外の何物でもありませんでした。

 この要求が持つ限りなく邪悪な悪性を読み取って、不快感を禁じ得ないサムエルが主に祈って得た答は、驚くべく彼の思いを超えていました。王政要求に関わる問題は政治問題ではなく深く神学の問題だ、という指摘があります。主イエスは「異邦人の間では、王が民を支配し、民の上に権力を振るう者が守護者と呼ばれている。しかし、あなたがたはそれではいけない。‥‥」(ルカによる福音書22章25、26節)と言い給います。それは神が民の要求を受け入れることを指示なさいます。「主はサムエルに言われた。『民があなたに言うままに、彼らの声に従うがよい。彼らが退けたのはあなたではない。彼らの上にわたしが王として君臨することを退けているのだ。』」(7節)。イスラエルが王制を導入したことのこのような複雑な状況の下であったことは、注目しなければなりません。こういう事柄として、(政治)権力問題に踏み入る時、そこは人は誰も完全に満足することのない領域に足を伸ばすことを意味する、と言った人がいます。神の前には「ユダヤ人もギリシア人もなく、奴隷も自由な身分の者もなく、男も女も」(ガラテヤの信徒への手紙3章28節)ない、という互いに完全に平等な人間が、同時に社会的な秩序の中で生きる時、神は御自分の主権を人々に「権力」としてお委ねになる(ローマの信徒への手紙13章1節)という、複雑な課題を含む状況が生じます。そういう事情を背景として、神はサムエルに王制を容認することをお命じになるのです

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