2021年9月12日主日礼拝

（礼拝動画）

（説教音声）

ルカによる福音書第10章25-37節

25すると、ある律法の専門家が立ち上がり、イエスを試そうとして言った。「先生、何をしたら、永遠の命を受け継ぐことができるでしょうか。」 26イエスが、「律法には何と書いてあるか。あなたはそれをどう読んでいるか」と言われると、 27彼は答えた。「『心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい、また、隣人を自分のように愛しなさい』とあります。」 28イエスは言われた。「正しい答えだ。それを実行しなさい。そうすれば命が得られる。」 29しかし、彼は自分を正当化しようとして、「では、わたしの隣人とはだれですか」と言った。 30イエスはお答えになった。「ある人がエルサレムからエリコへ下って行く途中、追いはぎに襲われた。追いはぎはその人の服をはぎ取り、殴りつけ、半殺しにしたまま立ち去った。 31ある祭司がたまたまその道を下って来たが、その人を見ると、道の向こう側を通って行った。 32同じように、レビ人もその場所にやって来たが、その人を見ると、道の向こう側を通って行った。 33ところが、旅をしていたあるサマリア人は、そばに来ると、その人を見て憐れに思い、 34近寄って傷に油とぶどう酒を注ぎ、包帯をして、自分のろばに乗せ、宿屋に連れて行って介抱した。 35そして、翌日になると、デナリオン銀貨二枚を取り出し、宿屋の主人に渡して言った。『この人を介抱してください。費用がもっとかかったら、帰りがけに払います。』 36さて、あなたはこの三人の中で、だれが追いはぎに襲われた人の隣人になったと思うか。」 37律法の専門家は言った。「その人を助けた人です。」そこで、イエスは言われた。「行って、あなたも同じようにしなさい。」

説教：『命を得させる隣りびと』　三輪恵愛牧師

１．「隣人愛」を考えるために、広く読まれてきた「善いサマリア人」のたとえ話

聖書のなかでは、もっとも有名と言われる箇所をご一緒に聴いていきます。「善いサマリア人」と言われるこの箇所は、キリスト教ではもちろんのこと、医療や福祉の現場における「隣人愛」を学ぶときにも題材として用いられます。サマリア人はユダヤ人から差別を受けていました。しかし痛みを負った命のために、危険を顧みずに寄り添うサマリア人の姿には、「自己犠牲」や「差別を超える」ことも含めた隣人愛を考えるための要点が映し出されているからです。

２．その問いは隣人愛の実践を超えて、永遠の命を受け継ぐことへとつながっている

このたとえ話を終えて、「何をしたら、永遠の命を受け継ぐことが出来るでしょうか(25節)」と問いかけてきた人に、イエスさまは言われます。「行って、あなたも同じようにしなさい(37節)」。つまり「隣人を自分のように愛しなさい(27節)」との掟を守るということは、このサマリア人のように生きるということなのです。ここで、すべての信仰者は立ち止まることとなるでしょう。「行って、あなたも同じようにしなさい」とのイエスさまの言葉に、忠実に従うことが出来るのだろうかと顧みずにはおられないからです。

３．サマリア人と「同じようにする」なかで、キリストが命を得させる隣人と知る

では、わたしたちは隣人を愛することが出来ず「永遠の命を受け継ぐ」ことも出来ないということになるのでしょうか。「行って、あなたも同じようにしなさい」の「同じように」と言われているところに、どこまでサマリア人と同じようにすべきかと考えます。彼は傷ついた人を介抱し、宿屋に運びます。危険を顧みず、差別もものともしません。しかしその前に、すべてに先立つことをしています。それは「そばに来て、見て、憐れに思う(33節)」ということです。その痛みに出来る限り寄り添い、その痛みを見て、知ります。そして「憐れに思う」、これは「痛みを負う」という意味をもちます。「自分の痛みとする」ということなのです。これは人を救う行いのすべてに先立つことです。「痛みを通してその人を知る」ということなのです。そのとき「同じようにした人」は、自らもまた、痛みに近づいてこられる方、痛みを知ってくださる方、痛みを負ってくださる隣人が、自分にもいることに気付くでしょう。危険を顧みずに、隔てを超えて隣人になってくださった方、イエス・キリストです。わたしたちはこのたとえ話から、隣人愛の極みを知る唯一の方、キリストがすべての人の隣人となってくださったことを知っていきます。「行って同じようにする」、キリストと共に行き、同じことをするとき、わたしたちには永遠の命を受け継ぐことが約束されている恵みに与るのです。